錦秋の神々の遊ぶ庭の大縦走 3日目 旭岳

午前0時

 

昨日の美瑛富士避難小屋と比べたら全然寒くない。

それでもシュラフを抜け出して外に出てトイレに行くのは勇気がいる。 

 

晴れていれば星空が見えるかもしれない。

その気持ちが後押ししてくれてカメラを持って小屋の外へ。

 

ガチャ・・・。

 

ヘッドライトを消す。

 

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見上げると満天の星空だった。

感動した。

感動はしたけど寒すぎるのでパパッと2枚ほど撮影してトイレを済ませて急いでシュラフにイン。

 

今日もいい日になりそうだ。

ニヤニヤしながら二度寝タイム。

 

 

3時半、起きる予定の時間にアラームなしで自然と起きた。

当然周りは寝ているので同行者を起こして外で火を焚いて朝ごはんタイム。

 

用意をしていると周りも起き始める時間になり、我々は一足先に出発させていただく。

 

「お気をつけて」「頑張って」

つい数時間前に初めて顔を合わせた同士の別れの瞬間が好きだったりする。

  

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外に出るとヒサゴ沼の水面は静かでこれでもかと紅葉の山肌を反射させていた。

 

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まずはこのヒサゴ沼を脱出して稜線まで登り返さなきゃならない。

昨日降りてきた岩と雪渓の道とは違って、化雲岳方面への道は木道で登りやすかった。

とはいえその木道も朽ちていたり、ボルトが外れて足を置くとグラついたりしたりと決して良い足場ではないが、前日を考えればどんな道も良道だった。

 

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稜線に復帰してから五色岳分岐まではひたすらなだらかな木道が続く。

朝の寒さで霜が降りているので滑らないように慎重に。

霜で一面草原が白い上に、うっすらガスがかかっていて太陽の光が輝くのでとても幻想的だった。

 

その1時間後―

 

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朝靄が晴れて真っ青な空が見える瞬間、たまらん。

 

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最終目的地の旭岳も快晴で良く見える。

ほんの数時間であそこまで行くのか。

遠いような、近いような。

昨日を思えば一瞬で着く気がした。

 

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早朝のハイマツ帯を歩く気持ち良さ。

そしてよく開けた場所で来た方を振り向いてみると・・・

 

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山が燃えていた。

 

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紅葉の鮮やかさでいえばここが一番凄かった気がする。

場所にして五色岳と化雲岳のちょうど中間にあたる部分の名も無い斜面だろうか。

これはお見事。

 

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どんどん進んで行きましょう。

気付けば忠別岳山頂の雲も取れているじゃないか。

 

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本当に一つ一つの山がカッコいい。

 

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下から見るととんでもなく大きく見えたが意外とあっさりと忠別岳(1963m)到着。

ここで逆方面からのパーティとこんにちは。

忠別岳の避難小屋からかな?

 

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この忠別岳、西側斜面は断崖絶壁になっている。

基本なだらかな大雪山系でも所々は荒々しいから面白い。

 

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落ちたら簡単に死ねそう。

しかし素晴らしい景色だ・・・。

 

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忠別岳から次なる道へ。

今度は東側がバッサリと落ちて断崖絶壁になっているその上をずっと歩いて行く。

 

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まずはちょっとだけ下って忠別沼。

ここは水場マークが付いていて沼の水を取れるので、浄水器を使って飲み水を作った。

 

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とても澄んでいて冷たくて美味しそうな水だ。

でもあんまり美味しくなかったんだよねこれがw

 

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少しだけ登り返して、あの上から見た台地セクションに!

 

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既にスケール感が麻痺しつつある中でもここのスケールのデカさには鳥肌が立った。

この日のハイライト区間になりそうな予感だ。

 

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たまんねえ・・・これはカムイミンタラだ・・・!!

 

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ほんの気持ち程度旭岳も近くなってきた。

その裾は真っ赤に紅葉している。

三連休の中日でこの快晴、明日からは台風が来る、ということで今日は旭岳は大賑わいだな。

 

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それにしてもこうして南からずっと縦走して思ったのは、旭岳は見て楽しむ山だなあということ。

それくらいこの縦走路から見る旭岳は秀麗だった。

 

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旭岳も素晴らしいが、振り返ってのこの高原沼の景色も素晴らしい。

どこを向いても絶景過ぎて何を撮ればいいのかてんやわんや状態。

 

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高根ヶ原も抜けていよいよ白雲岳が眼前に。

ここまではほぼ平坦だったが、ここからは2000m級の稜線に向かって一気に登る。

お腹が空いたが、もうすぐ白雲岳避難小屋があるはず。

そこまでは一気に行ってしまおう。

 

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稜線直下に赤い小屋が見えた。

見えてしまえばあっという間ですぐに白雲岳避難小屋に到着。

ここにはハイカーさんがたくさんいたし、ランナーの人も2人ほど見かけた。

これだけ人がいるのが久しぶりだったからなんか変な感じである。

 

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20分くらい休憩してリスタート。

稜線の白雲岳分岐に出てあまりの人の多さにビックリ。

いよいよ終盤に差し掛かったことを実感。

 

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これまでの草木の赤緑が綺麗な雰囲気から一転して、火山らしい荒涼とした風景に。

しかし、これもまたカムイミンタラ。

相変わらずのスケールのデカさ。

むしろスケール感は旭岳エリアに来てからの方が凄い。

それがこれだ。

 

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御鉢平カルデラ

その直径は2km。

ちょっとデカすぎてよく分からない。

 

「富士山に登って山岳の高さを語れ。大雪山に登って山岳の大きさを語れ。」

 

という言葉があるが、まさにその通り。

 

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この御鉢平をぐるっと一周する登山も人気のようだが、今回我々の目的は十勝岳から縦走してきて旭岳を踏む事。

このカルデラの縁を北海岳から荒井岳まで約4分の1周する。

そして見えた・・・!!

 

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最後の登り、裏旭!!!

ここが既に2100mはあるのにそれでも尚これだけデカい。

やはり北海道最高峰は伊達ではない。

 

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それにしてもこの裏から登る旭岳、とんでもなく急坂である。

そしてザレていて滑る滑る。

富士山の大砂走りを登っていくのを想像してもらえれば分かってもらえるだろうか。

前を行く山ガール御一行が登れずに大渋滞を起こしていた。

もう少しだ、頑張って!

 

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辛い辛い最後の登りを登り切る。

そしていよいよ・・・

 

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最後の頂、大雪山の主峰旭岳(2290m)到着!!

山頂は少しガスっていて展望はあまり効かなかったが気持ちは晴れやかだった。

ここに来るまでに良い景色はいくらでも見てきたし、ここからの景色よりも良いものをたくさん見てきた確信があったから。

 

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もちろん本当のゴールはあの姿見まで下ったところなんだけど、残る下りはビクトリーランのようなもので、実質的なゴールはこの山頂だった。

長い長い60km、偉大なる縦走路を走破した3日間をお互いに称え合って、我々は暫くの間山頂でゆっくりとした。

3日ぶりにスマートフォンの電源を入れて生存報告とツイートと諸々の連絡をする。

この感動をすぐに誰かに伝えたかった。

 

ゆっくりするとはいえ寒くなってきたので下山することに。

最後は姿見までザレた斜面で標高差600mを一気に下る。

 

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流石は最高峰、遮るものが一切ない素晴らしいダウンヒル

 

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無性に走りたくなったので相方に早々に別れを告げてここからは全速力。

なんて気持ちのいいトレイルなんだ。

 

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一瞬で姿見着。

コースタイム1時間50分を大体30分ちょいで。

 

それにしてもロープウェイで来れるここ姿見は人で溢れかえっていた。

それこそお洒落な服の人や底の高い靴を履いた女性なんかも。

むしろ半袖短パンのトレランスタイルのボロボロの登山者は場違いに思えてくるほど。

そんなに長居する場所でもないと思ったので、相方が到着したらすぐにロープウェイ駅へ。

 

3日ぶりのまともな人工物だ・・・。

まずは200円を迷わず自販機に突っ込んでコーラ!!!

五臓六腑に染み渡るという言葉の意味を体感した気がする。

 

食べ物にも課金したかったけどとりあえず下の駅まで降りてからにしよう、ということになってロープウェイ乗り場に行くも長蛇の列。

ここで同行者がボソッと「コースタイム1時間ちょいだったなあ…」と。

逞しくなったなあw

我々の脚なら1時間もかからないだろうから1800円払って列に並んで狭い車内にぎゅうぎゅう詰めにされるなら確かに自分の脚で下った方が良さそうだ。

 

これが大正解。

姿見からの下山路は上の混雑が嘘のように人ひとりいない静かな道だった。

マップには「岩場の急坂」と書いてある箇所も、どこが岩場でどこが急坂なのか分からないくらいイージーだったし、スイスイ走りながらすぐに下の駅に着いた。

 

3日目も結局29.7km、コースタイム16時間47分の長丁場になってしまったが、これでもう歩かなくて良いんだ。

 

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食堂でコーヒーとコロッケのセットを頼んで18時のバスを待つ。

1時間半も時間はあったが、この旅の思い出を語り合って、写真を見せあって盛り上がっていたらあっという間だった。

バスで3日ぶりの旭川駅に帰還。

 

まず真っ先にやるべきことは…3日ぶりの風呂!

駅前のホテルの大浴場に日帰り入浴。

熱々の風呂は殺人的な気持ち良さだった。

風呂上がりに体重計に乗ると、普段と比べて4.5kgも減っていた。

 

その4.5kgを取り戻すべく、いざ爆食いへ。

ロープウェイに乗るところを歩いた分1800円浮いているので食に課金することは何も恐くない。

しかし、結局700円弱でカレー2食分+ギョウザ6個のジャンボギョウザカレーを食べて満足してしまったw

 

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そしてネカフェにチェックイン。

明日は台風が来るみたいなので一日旭川に停滞して、明後日の朝一で東京に帰る。

長かった北海道旅の終わり。