錦秋の神々の遊ぶ庭の大縦走 2日目 トムラウシ山

 偉大なる縦走路2日目。

 

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いざ憧れの山頂へ。

 

 

 

1日目 十勝岳の記事はこちら 

grandtraverse.hatenablog.com

 

 

 

3時30分

起きた。寒い以外の感情が無い。

 

急いで火をつけてお湯を沸かし、ジップロック飯に注いで湯たんぽ代わりに抱きかかえる。

 

ご飯を食べて外に出ると…ガスってる。

 

大いなる縦走、長い長い2日目が始まる。

 

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 0℃あるかどうかの冷え込みだったから、ダウンも着たまま歩き始める。

前日の雨で地面はぬかるんでいて歩きにくい。

乾くまではいかないものの、なんとか湿ってる程度までは乾いた靴を再び濡らさないよう慎重に足を置いていった。

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進む方向はガスっていて視界はあまり良くない。

しかし、ガスの向こうに確かに太陽を感じる。

これはそんなに分厚くないガス。

直に晴れるのは確信できた。

 

そして、その時が。

 

 

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朝日に照らされる真っ赤な斜面。

そして広がる大雲海。

想像以上の絶景だった。

 

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正直トムラウシまでは退屈な歩きを強いられるのかと思っていたがとんでもない。

この美瑛岳~ベベツ岳~オプタテシケ山と繋がる稜線は今回の縦走路の中でもハイライトのひとつだ。

 

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ひとまず晴れやかな気分でオプタテシケ山(2012m)を踏んだ。

 

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ここまでも良いペースだが、山頂で余韻に浸る暇もなく先を急ぐべく次なる稜線へ。

 

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ここからこの縦走路の最低標高(姿見以降を除く)である双子池まで600mほど一気に下る。

特に問題のない下りだったのでそこそこのペースで飛ばすものの、双子池が眼下に見えたきたあたりで、先頭を歩く同行者が突然止まった。

そして青ざめた顔で振り返り、小声で「出た…」と。

どうやら7mほど先の茂みにヒグマらしきものを見たという。

一気に緊張感が走った。

頭の中にインプットしていたヒグマ対処法をひとつずつこなしていく。

結果的には大きな黒い岩の見間違いだったものの、マップにも「ヒグマ出没要注意」と書いてある地点だけにここからも気が抜けなくなった。

 

そして双子池の最低標高にたどり着くと次はまたひたすら登り返し。

しかしここからが本当に厳しい道だった。

まずは前日の雨で川と化した登山道。

もはや回避不能で諦めて靴を水没させる以外無かった。

そして困難はさらに続いて、酷い藪こぎになってきた。

始めこそ膝丈ほどだったが、次第に腰、最後には身長175cmの自分でも首にまで達するほどの深い笹藪をかき分けて進む道になった。

しかもその見えない足下に沼と水溜まりのトラップが敷き詰められているのだから堪らない。

思えば大した距離もアップもなさそうなのにやたら長いコースタイムに疑問を抱いていたのだがこういうことだったのか…。

 

先頭を代わり藪の道を気合いで切り開いて行く。

相当辛い闘いを強いられたものの、時間的にはかなりいいタイムで次の経由地コスマヌプリの肩に辿り着いた。

 

二人とも着くなりザックを下ろして座り込んでしまった。

数kmにわたる藪こぎに、水没しきった装備、当然写真を撮るような気分でもない。

唯一の救いは晴れていて紅葉が素晴らしいことと、ペースがコースタイムの6~7割を切るくらいで進めていることだ。

 

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遠くに特徴的な尖った形の山に道が見える。

次なる経由地のツリガネ山まではコースタイム2時間半だが、1時間半あれば着きそうだ。

相変わらずの藪だが、ここまでよりはマシになっている。

 

予想通りの良いペースでツリガネ山にも到着。

 

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ここで初めて逆方面からのハイカーさんと一人すれ違った。

ここまで誰一人として会わなかったからやはりトムラウシ十勝岳間を歩く人はほとんどいないんだなあと。

 

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ツリガネ山から見た紅葉はそれはそれは見事だった。

三川台のカール地形の中の紅葉も素晴らしいし、名もない斜面の色鮮やかな紅葉は本当にため息しか出ない。

 

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やっと奴が姿を見せた。

トムラウシ…!!!

とてつもなくデカい山塊に圧倒される一方で、ここまで歩き続けてきた我々には、「もう意外と近いな。すぐに着きそうだ。」という謎の自信もあった。

 

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ここツリガネ山から三川台を経てトムラウシ直下の南沼までの6kmは個人的にこの66kmの一番のハイライトだったと断言できる。

 特に三川台からしばらくはカールの縁の平坦なトレイルを駆け足で抜けられるので、合計コースタイム4時間40分のところを2時間もかからなかったはず。

 

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歩くほどにどんどん近づいていくトムラウシ山

ここまでとは違って岩々した山だ。

ずっと山頂部分は曇っていたがここにきて雲が取れ始めてるではないか!

まだ間に合う。

 

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しかし南沼キャンプ地から最後の登りが急坂で心臓が破れそうだ。

ギアを1、2枚上げて息を切らしながらヒルクライムみたいな強度で一気に駆け上がる。

 

そして・・・

 

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憧れの峰、トムラウシ山(2141m)!!!

時計を見るとまだ13時半。

大体コースタイムの55%くらいで辿り着くことができた。

本当に朝の双子池のあたりではどうなってしまうものかと悶々とした気分でひたすら歩いていたが、ようやく晴れやかな気分になれた。

ここまで来れば今日の宿泊予定地であるヒサゴ沼まではコースタイムでも2時間半ほどなので暗くなる前には必ず着ける。

ようやく時間制限から解放されて山頂でしばらくゆっくりと休憩し、景色を堪能した。

 

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これまで歩いてきた十勝岳からオプタテシケ山までの十勝連峰の姿を望遠する。

とんでもなく大きい山塊である上にとんでもなく遠い。

あそこから半日で歩いてきたという実感がなかなか沸かない。

 

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奥の三角のデカい山がオプタテシケ山

手前の下に見える三角の出っ張りがツリガネ山。

その間の区間が地獄の藪漕ぎ区間…。

 

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そして反対側に目をやればこれから我々が進む旭岳たちがどっしりと待ち構えていた。

これがまためちゃくちゃ遠いこと。

明日のうちにあそこまで歩かなくてはいけない。

明日も長い縦走路になりそうだ。

 

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20分くらいゆっくりして下り始める。

まずは真っ赤な絨毯の上を歩く。

そこから先は大きな岩がゴロゴロ敷き詰められた道がひたすら続く。

 

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その名も「ロックガーデン」。

ペンキマークを見失わないように、足元を気を付けながら下る。

ここはガスっていたら容易に遭難できそうだ・・・。

 

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ひたすら岩から岩へ飛び移る。

岩しかねえ…。

しかもデカい岩のくせに足を置くとグラつくものもあるから恐い。

お前その図体で動くのかよ、と。

 

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UCCの足跡だ…。

 

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岩々したセクションが終わると沼が点々とするエリアを木道で歩く。

なんて歩きやすいんだ・・・(泣)

午前中の最悪の足場から一転して天国のような歩きやすさである。

 

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しばらく歩くと右手の眼下に大きな青い沼が見えた。

今日のゴール、ヒサゴ沼。

綺麗な青に、湖畔の紅葉も最高じゃないか。

奥には石狩岳も見えている。

いつか行きたい東大雪の山の一つ。

あっちから今回の縦走路を眺めたい。 

 

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 16:20、ヒサゴ沼避難小屋到着。

ヒサゴ沼分岐から下る道は急な雪渓歩きがあってとにかく滑って危険だった。

 

22.5km、標準コースタイム17時間15分が終わった。

無事に明るいうちに到着できた。

トムラウシを越えればあとは水場にも困らないし、道もいいはず。

ひと安心。

 

避難小屋にはすでに4人ほどいた。

十勝から来たと言うとどの登山者にも驚かれる。

やはりオプタテシケ~トムラウシは歩く人が著しく少なくなるようだ。

しかし、双子池も、ツリガネ山も、三川台も、この区間を縦走しなければ見られない最高の景色を見せてくれた。

やっぱりやるなら十勝岳から旭岳までまるっと縦走するのが幸せになれると思った。

 

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濡れた靴を脱いで西日に乾かしてもらい、傾く太陽と照らされる紅葉を眺めながら小屋の外で夕飯タイム。

小屋に戻るとまだまだ明るいのに周りが皆さん寝ていて音を立てるのも忍びないので我々もそっとシュラフに入った。

しばらく今日撮った写真を眺めながらホクホクして18時には就寝。

 

 

●行動コースタイム(11時間30分)

5:00 美瑛富士避難小屋

6:30 オプタテシケ山

7:50 双子池

9:20 コスマヌプリ

10:35 ツリガネ山

11:55 三川台

12:55 南沼

13:20 トムラウシ山

14:20 北沼

16:30 ヒサゴ沼避難小屋

 

 

3日目に続く。